中島京子『やさしい猫』

はじめに、twitterでこの本の存在を教えてくれた「クルド人難民Mさんを支援する会」さんに感謝したい。

そして、今、この小説を書いてくれた中島京子さんに。

読む者をぐいぐい引き込んで、ストレートに感情に訴えかけてくる物語に、文学の力を感じた。

この物語は、まさしく、今書かれなければならなかった物語だと思う。

まず、この物語を読んでみてほしい。/

 

 

3の娘マヤと暮らすシングルマザーの保育士ミユキさんは、東日本大震災のボランティアで被災地の保育園を訪れ、スリランカ人のクマさんと出会う。

東京に帰って来たミユキさんは、偶然クマさんと再会し、いつしか交際するようになる。

だが、ある日、クマさんは会社を首になり、職探しに奔走する間にビザの期限が切れてしまう。

紆余曲折を経て、クマさんとミユキさんは結婚するが、クマさんは在留資格が切れてしまったことを入管に相談しに行く途中、品川駅で警察に逮捕され、入管施設に収容されてしまう。/

 

 

読後、ひとつのイメージがどうしようもなく僕の中に居座ってしまった。

それは、一匹の猫のイメージだ。

猫はトカゲを弄んでいる。

鋭い爪と牙を持つ肉食獣である猫が、小さなトカゲをさも楽しそうに弄んでいる。

逃げ出そうとしても、シッポを切ったとしても、トカゲは猫の囚われの身だ。

そうして、散々弄んでトカゲがボロボロになった頃、猫はトカゲを放り出す。

もうトカゲに飽きたのだ。

トカゲが生きようと死のうと、猫は知ろうともしない。