2023-06-05から1日間の記事一覧

劉 燕子【編訳】『黄翔の詩と詩想』

2020年6月30日、中国で香港国家安全維持法が施行された。 さらに、2021年6月2日、香港の天安門事件記念館が閉鎖された。 そして、天安門事件から33年目の本年6月4日、香港での追悼式典は開催が見送られた。 天安門事件は、当局の思惑どおり、今や忘られんと…

胡平『言論の自由と中国の民主』

本書は、2009年6月4日に出版されている。 訳者が本論文の翻訳に着手したのは2008年の秋とのことだが、天安門事件二十周年の日に見事に間に合わせたわけである。 僕としても、できれば6月4日に読了したかったのだが、生来の怠け者ゆえ叶わなかった。/ ◯著者…

児玉晃一『難民判例集』

二十年前に出版されたこの判例集を読むことにどんな意味があるのか、いまひとつ定かではないが、ただいま「読書デモ」中であり、先日読んだ『入管問題とは何か――終わらない〈密室の人権侵害〉』の著者、児玉晃一さんの本が読みたかったので、手に取った。/ …

鴇沢哲雄『日本で生きるクルド人』

著者は、2008年に毎日新聞川口通信部に赴任する。そこには、たくさんのクルド人が住んでいた。 著者が、毎日新聞埼玉版に、2017年12月から2018年8月まで、24回にわたって連載した「故郷遥か 川口のクルド人」を基に、全面的に書き下ろしたもの。 映画『東京ク…

指宿昭一『使い捨て外国人』

「強制労働」改め 「技能実習」と呼ぶ。あ〜らほんとに現代的だわね!/ ◯緩やかな 処刑機械と 人のいう 黒く塗りたる 入管の壁/ 簡潔にして明瞭。 蝶のように舞い、蜂のように(本質を)刺す。 これぞ良書である。 【厚生労働省の「外国人技能実習生の実習実…

和田浩明『彼女はなぜ、この国で』

ウィシュマさん死亡事件は、最低でも業務上重過失致死罪、いや違う、そんななまやさしいものではない。 この事件こそ不作為による殺人罪ではないだろうか? 病気の症状を訴え、病院に連れていってほしいとのウィシュマさんの必死の訴えに対して、頭から詐病…

鈴木江理子 ・児玉晃一 編著『入管問題とは何か』

入管施設における死亡事案に関しては、先日読んだ『入管解体新書』の感想に書いたので、ここでは割愛する。/ 《社会世界の端役である女性たちには、最後の行き場として、あらゆる危機の影響が、どうしようもなく収斂するのである。》(ピエール・ブルデュー…

山村淳平『入管解体新書』

この国の入管・収容体制の非情さ、その非人間性に怒りを禁じ得ない。/ ◯収容所での死亡者数(1993年〜2022年):26人/ 死因:病死(脳血管疾患や心筋梗塞など)16人、自殺8人、暴行死2人/ 国籍:イラン3、フィリピン3、ベトナム3、中国2、インド2、ナイジ…

中島京子『やさしい猫』

はじめに、twitterでこの本の存在を教えてくれた「クルド人難民Mさんを支援する会」さんに感謝したい。 そして、今、この小説を書いてくれた中島京子さんに。 読む者をぐいぐい引き込んで、ストレートに感情に訴えかけてくる物語に、文学の力を感じた。 この…

映画『マイスモールランド』(監督: Emma Kawawada、 川和田恵真)

公開日: 2022年5月6日 日本の入管・難民制度の非人間性と、その抑圧の中で懸命に生きているクルド人親子の姿を描いている。 映画『東京クルド』でも描かれていたが、仮放免者は就労が禁止されている。 おまけに生活保護の受給も認められていない。 県を跨い…

映画「東京クルド」(監督:日向史有。2021年公開)

解体作業に従事しているクルド人青年と入管職員とのやり取り。 『職員 まだやってる仕事 解体の仕事でしょ 青年 そうだよ 職員 それだけ?収入源としては 他にお父さんとか 青年 親父と俺だけ 仕事しちゃいけないの? 職員 そう仕事しちゃいけないの 青年 な…

映画『亡命』(翰光監督/2010年)

六四天安門事件34年目の今日、記念に何か読もうと思ったが、今読んでいる鄭義の『中国の地の底で』は、まだ読み終われそうにないので、『亡命』のDVDを観ることにした。 このDVDは、「異人」である僕にとってのバイブルでもあるから。/ 【「獄」という字—両…